詩集 どんな恋ならしてみたい?
【依頼-02 相性】
12音ソネットの試み - 人間関係
魂の向き合う形
合ひしとき絆深まる
背くとき絆弱まる
縁(えにし)なり 綾なす形
されどまた 合はざる故に
惹(ひ)かれ合ひ絆深まる
合ふ故に絆薄まる
天の采配 絶妙に
縦糸に人の情もて
世の中の 柵を為す
されど是 まさに機微なり
横糸に人の義理もて
世の中の 不条理を為す
されど是 まさに妙なり
----
とある日曜日の朝に、その依頼者はやってきた。
ここは3日交替で、その日の私は出勤だ。
私はキキョウ。28歳。
メイさんみたいになりたいと、入社してからはや5年。
なかなか上達しないけど、このままやっていけるかな?
「あの~ぉ」 間延びした声かけられた。
「あ、はいはい、すみません」 気を取り直し、向かい合う。
この依頼者は私より幾分若い女性だが
最近なぜか恋人と口論が増えたという。
「もう私たち駄目なんでしょうか?」
哀しそうに言われても、私に分かるわけがない。
「やっぱり相性が、、、」
「ちょっと待ってください!」
来た来た得意の相性が。最近何でも相性の
せいにする人増えたよね。努力するのが嫌だから
相性理由に逃げ回る。そんな事で相談を
持ち込まれてもうざいだけ。
待て言われた依頼者は驚いた顔で固まった。
脳内立卦は「天地否(てんちひ ※1)」
「あなたは不仲の原因を相性のせいにするんですか?」
「実際、相性が悪いからうまくいかなくなるんです」
「若いわね」
「えっ」
「ホントに相性悪いとね、そもそも近づく事もない。
そういうものなのですよ」
「はあ」
「昔の人は言いました。喧嘩するほど仲がいいって。
喧嘩が出来る距離感って、そもそも近いものなのよ。
遠いと喧嘩にすらならない」
「だからといって喧嘩しかない状態も、、」
「その喧嘩って、お互いにそう思っているのでしょうか?」
「はいっ?」
「ほんのすこし、少しだけ視点を変えてみるといい。
相手の気持ちが見えてくる。それであなたは変われるわ。
あなたが変われば相手もね、次第に変わっていくものよ」
どんなに相性良くたって、お互い勝手しまくれば
衝突だって起きるでしょう。相手が和む一面を
出し合ってこそ相性の良さも発揮出来るはず。
恋人同士だけじゃない。人と人とが関われば
織りなす模様は色々で、、。
翌週の金曜日。
来たよ、来ました、あの時の、相性信者の依頼者が。
順番が来て呼ばれると、恥ずかしそうに入室し、
「あの、今日はお礼をと思いまして」
何故か同伴者がひとり。それもきれいな女の子。
「二人一緒に来ちゃいました!」
にっこり笑う依頼者に、思わず引いてしまいます。
私に構わず依頼者は話の続きに余念なく、
「ここでの事を話したら、会ってみたいと言い出して」
同伴してきた女の子。続けて語り始めたよ。
「お話通りの方ですね。会えてとっても嬉しいです」
こりゃあしばらく止まらない。も少し聞いててあげようか。
ポーカーフェイスを装って暫く相手をしていると、
「時間がある時だけでいいので、その、お姉さま」
何を言うかと思ったら、二人そろってきらきらの
瞳を向けてきているよ。
「はいはい、今度ご一緒にお茶でも飲みにいきましょう」
営業スマイル全開で返事をしたらこの二人、
手を取り合って歓喜の声。息ぴったりじゃん。思ったら、
なんだか微笑ましくなって、言わんでいい事まで言った。
「私の隠れ家の中で、ケーキと紅茶が絶品の
店があるからそのうちに連れていってあげるから」
私の大事な隠れ家を、自らなくした瞬間だ。
ひとりっきりになれる場所。
また捜さなきゃ。面倒だ。
----
※1 天地否の卦では、天はますます高く、地はますます低く
あり続けるので交わるところがない、という程の意。お互い
に見る物が違う様子。仲が悪いわけではないので同じ物を見
る様にすれば自然にコミュニケーションが成立します。
12音ソネットの試み - 人間関係
魂の向き合う形
合ひしとき絆深まる
背くとき絆弱まる
縁(えにし)なり 綾なす形
されどまた 合はざる故に
惹(ひ)かれ合ひ絆深まる
合ふ故に絆薄まる
天の采配 絶妙に
縦糸に人の情もて
世の中の 柵を為す
されど是 まさに機微なり
横糸に人の義理もて
世の中の 不条理を為す
されど是 まさに妙なり
----
とある日曜日の朝に、その依頼者はやってきた。
ここは3日交替で、その日の私は出勤だ。
私はキキョウ。28歳。
メイさんみたいになりたいと、入社してからはや5年。
なかなか上達しないけど、このままやっていけるかな?
「あの~ぉ」 間延びした声かけられた。
「あ、はいはい、すみません」 気を取り直し、向かい合う。
この依頼者は私より幾分若い女性だが
最近なぜか恋人と口論が増えたという。
「もう私たち駄目なんでしょうか?」
哀しそうに言われても、私に分かるわけがない。
「やっぱり相性が、、、」
「ちょっと待ってください!」
来た来た得意の相性が。最近何でも相性の
せいにする人増えたよね。努力するのが嫌だから
相性理由に逃げ回る。そんな事で相談を
持ち込まれてもうざいだけ。
待て言われた依頼者は驚いた顔で固まった。
脳内立卦は「天地否(てんちひ ※1)」
「あなたは不仲の原因を相性のせいにするんですか?」
「実際、相性が悪いからうまくいかなくなるんです」
「若いわね」
「えっ」
「ホントに相性悪いとね、そもそも近づく事もない。
そういうものなのですよ」
「はあ」
「昔の人は言いました。喧嘩するほど仲がいいって。
喧嘩が出来る距離感って、そもそも近いものなのよ。
遠いと喧嘩にすらならない」
「だからといって喧嘩しかない状態も、、」
「その喧嘩って、お互いにそう思っているのでしょうか?」
「はいっ?」
「ほんのすこし、少しだけ視点を変えてみるといい。
相手の気持ちが見えてくる。それであなたは変われるわ。
あなたが変われば相手もね、次第に変わっていくものよ」
どんなに相性良くたって、お互い勝手しまくれば
衝突だって起きるでしょう。相手が和む一面を
出し合ってこそ相性の良さも発揮出来るはず。
恋人同士だけじゃない。人と人とが関われば
織りなす模様は色々で、、。
翌週の金曜日。
来たよ、来ました、あの時の、相性信者の依頼者が。
順番が来て呼ばれると、恥ずかしそうに入室し、
「あの、今日はお礼をと思いまして」
何故か同伴者がひとり。それもきれいな女の子。
「二人一緒に来ちゃいました!」
にっこり笑う依頼者に、思わず引いてしまいます。
私に構わず依頼者は話の続きに余念なく、
「ここでの事を話したら、会ってみたいと言い出して」
同伴してきた女の子。続けて語り始めたよ。
「お話通りの方ですね。会えてとっても嬉しいです」
こりゃあしばらく止まらない。も少し聞いててあげようか。
ポーカーフェイスを装って暫く相手をしていると、
「時間がある時だけでいいので、その、お姉さま」
何を言うかと思ったら、二人そろってきらきらの
瞳を向けてきているよ。
「はいはい、今度ご一緒にお茶でも飲みにいきましょう」
営業スマイル全開で返事をしたらこの二人、
手を取り合って歓喜の声。息ぴったりじゃん。思ったら、
なんだか微笑ましくなって、言わんでいい事まで言った。
「私の隠れ家の中で、ケーキと紅茶が絶品の
店があるからそのうちに連れていってあげるから」
私の大事な隠れ家を、自らなくした瞬間だ。
ひとりっきりになれる場所。
また捜さなきゃ。面倒だ。
----
※1 天地否の卦では、天はますます高く、地はますます低く
あり続けるので交わるところがない、という程の意。お互い
に見る物が違う様子。仲が悪いわけではないので同じ物を見
る様にすれば自然にコミュニケーションが成立します。