たった一つの勘違いなら。
そのとき身体に乗っていた重みがふっと外れたのを感じて、恐る恐る目を開けた。
真吾さんが私を見下ろしている。
なぜか驚いている様子が、やがて苦しげな表情に変わる。
「ごめん」
抱き起こして緩く抱き、ごめんと繰り返す。まだ酔ってる、でももういつもの真吾さん。
何も言えなくて、ただその胸にもたれかかった。謝らなくちゃいけないのは私の方だったのに。
「ごめん、怖がらせた」
違うとは言えなかった。まだ身体はこわばっていた。でも真吾さんは気づいてやめてくれたから大丈夫だと自分に言い聞かせる。
「ごめんなさい」
謝らせてばかりいるわけにいかなくて、やっと言った。
「高橋くんに頼まれて行った飲み会で、恵理花がいたのは本当なんですけど、でもごはんだとか嘘つきました」
「……今日は?」
今日? まさか真吾さんまで高橋くんと何かって思ってるの?
「高橋くんとは全然なんにもないです。たぶん恵理花にチョコをもらえて今頃浮かれてます」
「どこかの帰りかと」
なんでそんなこと。あ、今日は会社に行った服のままだ。
「ずっとどうしようか迷ってて着替えてないだけです。他の人と会ってるかもしれないけど、でもやっぱり今日じゃないと意味ないと思って」
今日がんばらなかったらもう、このまま終わっちゃうのかと思って。