たった一つの勘違いなら。
「キス、していい?」

「……はい」

ゆっくり、いたわるように、確かめるように。気持ちを探り合うみたいにキスをした。

お酒くささはすぐに自分のものになったように気にならなくなって、私たちは日付が変わってもずっと離れることができないみたいに唇を重ねていた。

たぶん押し倒されてももう私は怖くなかったと思うけれど、真吾さんはそれ以上のことはしなかった。

途中で一度おでことおでこをくっつけるようにして、「ごめん」ともう一度言ってくれたことに正直言って驚いた。

私は抵抗しなかったのに、身動きひとつしなかったのに。私にはあなたのことが全然わからないのに、どうして私のことはそんなにわかるの。

ほんの少しの幻滅なんてどこにあるのか見えなくなってしまうくらいの、ありあまる魅力と優しさ。

あなたを嫌いになることなんて、絶対に無理だと思います。


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