たった一つの勘違いなら。



【ホワイトデー、どこか希望ある?】

【たまには私がごはん作るっていうのはどうでしょう】

【もちろん大歓迎】

そんな短いやり取りだけど珍しくずいぶん前に予定を決めてくれたその日まで、食事を一緒にできたのもほとんどないくらい。

真吾さんには3月の年度末で片付けないといけないことも多いらしかった。



下ごしらえまでうちで済ませておいた食材を持ち込んで、カルパッチョ、サラダ、ブルスケッタにローストチキン。

いかにも普段作ってない人が頑張りました感があるけれど、事実なのでしかたない。自炊はするけれど、私は本当に簡単にお肉を焼いたり野菜をゆでたりするくらいで済ませている。

その代わりと言ってはなんだけど、張り切って用意しておいたキャンドルを立ててクロスを重ね、ちょっといい感じにセッティングしてみたテーブルの向こうで真吾さんが微笑む。

料理はともかく、このアレンジは結構恥ずかしいくらいロマンチックな雰囲気になったと思う。

真吾さんは少し驚きつつも、もちろんいつも通り褒めてくれる。雰囲気も料理も珍しく髪を巻いたりしてみた私のことも。嬉しいって言ってくれる。
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