たった一つの勘違いなら。
食後にソファに移動して、バレンタインのお返しだと小さな箱を渡してくれる。
一瞬、ほんの一瞬だけ、指輪かと息を呑んだ自分のバカさ加減は置いといて、品のいい小箱の中身はピアスだった。
輝く優しいピンクの石に柔らかな色合いの石がいくつも寄り添うパヴェ。春の花束みたいな形のピアス。
「きれい」
「いつものと違う感じがいいかと思って」
「すごく素敵です。嬉しい」
「つけてやろうか」
え、人のピアスを付け替えるなんてできるのと思ったけれど、真吾さんは難なく私がいつもつけてる一粒パールを外し、かわいい花束と取り替えた。
こういう時ちょっとだけ過去の誰かに嫉妬していることを、さすがに気づかれてはないといい。
「かわいい」と耳を触りながらさりげなくキスする姿も、慣れ過ぎてて気になったりして。
スマホをインカメラにして、自分でも見てみた。優しいのに華やかさもあって、なんにでも似合いそう。
「写真撮ってもいいですか?」
そう聞いたら意外と照れた感じの真吾さんと、2人でくっついて自撮りをする。今まで1枚も撮ったことがないから、1枚くらいはあってもいいよね。