たった一つの勘違いなら。


そのまま当たり前みたいにキスにつながる。軽く応えてから、深くなる前に言った。

「ホワイトデーに欲しいものがあったんですけど」

「そういうの先に言えばいいのに。なんだった?」

さりげなく言おうと思ってたのにいざとなったら恥ずかしくて、真吾さんの肩におでこをつける。

「真吾さんが、欲しいです」

ドクン、と鳴ったのは真吾さんの胸の方だったかもしれない。

「いいよ」

でもまるで動じない笑顔で、両手で顔を挟んであげさせて柔らかく口づけてくれる。

「俺は詩織のものだよ」

そういう意味では、と思った時にはもうキスは激しくなっていて。押し倒すことはしないまま、真吾さんの手が私の肌を滑り始めた。


初めて入る寝室で、大きなベッドに私を座らせてまたキスをする。

服を脱がせる。肌に触れる。

ひとつひとつを丁寧に優しく、時間をかけてくれる。何度も優しくキスをして、名前を呼んでくれる。
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