たった一つの勘違いなら。
初めてでもないのに、初めて以上にやっかいであろうガチガチの私に根気よく。

「怖かったらやめるから、無理しなくていいから」

「やめないで」

首を振った。身体はまだ怖がってるけれど、怖くないから、真吾さんだから。やめないで。

どうにかひとつになった後も、ゆっくりとまるであやすようだった。

「詩織。大丈夫だから、力抜いて」

髪を撫でながら、優しく優しくしてくれた。それでも途中から痛くなってきた私を見かねて、終わらせてくれた。

「ごめんなさい」

「いいんだよ、詩織は俺の心配しないで自分のことだけで。俺は、詩織がいいのが一番嬉しい」

泣いてしまった。こんなにも優しい人がいる。

それからもう一度挑戦して、今度は私も力を抜いて委ねることができた。この人にただ全て預けて、一瞬だけでもいいからひとつになった気がしたかった。

真吾さんがちょっと苦しそうな、でも気持ちよさそうな顔をする。いろんな表情を見たけど、こういうのも。

「きれい」

「俺のセリフだよ、バカだな」

苦しげに呟いた真吾さんは私のおでこにキスして、しばらく後に小さくうめき声をあげて終わった。重たい。でも怖くなんか全然なくて、ぎゅうっと背中を抱き締めた。

抱き合って、またキスをして、眠った。へとへとに疲れて、触れあっている肌の心地よさに身を任せて。



< 112 / 179 >

この作品をシェア

pagetop