たった一つの勘違いなら。
「昔、とても好きな人がいた女の子がいました。でも彼は別の子を想ってると彼の友達が教えてくれました。慰めてくれたその友達が、女の子のはじめての人になりました。
でもその後に『ずっと好きだった』と彼に告白されて、友達を問い詰めると嘘だと認めてケンカになって。その時は無理やりでした」

怖かった。俺だって好きなのにと気持ちをぶつけられ、もう処女ではないからか相手には罪悪感がないみたいで、そのことがなお怖かった。

ちゃんと別れられるまでにもう1度そういうことがあって。忘れようと思ったけれど、疲れすぎたりするとなぜか現れる夢になった。

こんなこと話す必要ないかもしれないけど、でもそうじゃないと伝わらないと思う。

「いい人ぶって近づいて、結局自分の思い通りにしたいだけとか。私はそういう汚い人間になりたくなかったんですけど。でも同じかもしれない」

偽装彼女だと言いつつ、会いたくてキスして欲しくて抱いて欲しくて。

「君を手に入れたがってたのは俺のほうだよ。でも、やり方を間違えたな」

「見ているだけでいいはずだったんです。人の恋を応援しているだけで」

「俺には詩織が必要だって言ったら?」

そんなことを言われたら、もちろん気持ちは揺れるけれど。

「嬉しいです。でもそこは譲れないラインです」

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