たった一つの勘違いなら。
「詩織」
名前を呼ばれても、もうダメです。
「真吾さん、私達の約束はまだ有効ですよね?」
「ああ」
もちろん私の手口をわかってて、それでも付き合ってくれる。
「私が嫌がることはしないんですよね?」
「……しないよ」
「この関係をもう続けたくないんです」
「詩織」
「そこは『いいよ』っていうところです」
「言いたくない」
でももう春だから。約束通り終わりにします。
「詩織、話があるって言ったよね。俺の話も聞いてくれないか」
「結婚のことはよくわからないですけど。カズくんとのことは今も応援しています、ずっと。それだけなんです」
それだけでいるべきだったんです。
「大丈夫です。私はずっと真吾さんのファンですから」
そこまで言うと、真吾さんはやっと黙ってくれた。最後に見た顔は悲しげで苦しげで。
でも最初から私は偽の彼女なんだから、春までの期限付きの。このまま割り込むなんて許されない。
真吾さんの結婚話が進んでいくのを近くで見ている勇気ももちろんない。
カズくんはどうだか知らないけど。女の人と軽く遊んでいる間も一緒にいたなら、きっと大丈夫なんだろう。
男同士だから。女の人のことは別だと割り切れるのかもしれない。
名前を呼ばれても、もうダメです。
「真吾さん、私達の約束はまだ有効ですよね?」
「ああ」
もちろん私の手口をわかってて、それでも付き合ってくれる。
「私が嫌がることはしないんですよね?」
「……しないよ」
「この関係をもう続けたくないんです」
「詩織」
「そこは『いいよ』っていうところです」
「言いたくない」
でももう春だから。約束通り終わりにします。
「詩織、話があるって言ったよね。俺の話も聞いてくれないか」
「結婚のことはよくわからないですけど。カズくんとのことは今も応援しています、ずっと。それだけなんです」
それだけでいるべきだったんです。
「大丈夫です。私はずっと真吾さんのファンですから」
そこまで言うと、真吾さんはやっと黙ってくれた。最後に見た顔は悲しげで苦しげで。
でも最初から私は偽の彼女なんだから、春までの期限付きの。このまま割り込むなんて許されない。
真吾さんの結婚話が進んでいくのを近くで見ている勇気ももちろんない。
カズくんはどうだか知らないけど。女の人と軽く遊んでいる間も一緒にいたなら、きっと大丈夫なんだろう。
男同士だから。女の人のことは別だと割り切れるのかもしれない。