たった一つの勘違いなら。
7章 破壊の春分
真吾さんの出張は2泊3日のはずだから、翌週以降はたぶん会社にいるんだろうと思った。
朝はゆっくり出社して混み合ったエレベーターに乗り、打合せは相手になるべく法務のほうへ出向いてもらい、微妙に残業してさっと帰る。
そうやって暮らしていけば、意外と日々は過ぎていく。
その後連絡はなんにもなくて、自分で言っといて当たり前なのにあっけないものなんだなって思う。
あんなにも真吾さんでいっぱいだった生活は、すっかり元通りかと思いきや、でも。
ほとんど会えてなくて頭の中には常にいる状態としては、あまり改善されておらず。
婚活なんて始められるのはいつのことやら、と思っていた。
もしかしてそろそろ婚約の発表とかせめて確実な情報とかが回ってくれば。少しは踏ん切りがつくのかもしれない。
それまでできるだけ顔を合わせたくないなと思う。思い出すだけで泣きそうになるんだから、本物なんてみたらどうなるかわからない。
今まで通りの顔をされてもどうしていいかわからないけど、外面の王子様対応をされたらきっと無駄にショックを受けるだろう。
できるだけすれ違いたくもない。そしてそれは、そんなに難しいことでもない。もともと住む世界は違う人だ。