たった一つの勘違いなら。
「彼女さんにもカズくんって呼ばれてるんですね」
とっさになんとかカマをかけてみた。
「ああ、橋本さんにも聞かれたんでしたっけ。あの人ほんっと迂闊だからやめて欲しいんですけど」
「まだやめてくれないの?愛されてるよね、カズくん」
彼女さんは楽しそうに彼に絡んでいる。その呼び名も当然知っているという感じだ。
「たまにだけどイライラしてるとやってくるんだよ、わざと。俺、真顔で『課長とお付き合いされてるんですか』って聞かれたことある」
「えー、似合うかも!」
「やめろ、鳥肌立つだろ。ていうか、橋本さん引き留めちゃってすみません」
「いえ」
「あの、余計なお世話かもしれませんけど、課長いろいろ頑張ってるみたいだから、噂とか気にしなくっていいと思いますよ」
「噂?」
「いや、余計な口出しするなって言われてるんですけどでも心配かなと思って。すみません」
なんのことだかわからないけれど、それどころじゃなく、とりあえず手を振って2人を見送った。
仲良さそうに並んで歩く彼氏彼女の姿が見えなくなるまで。
なにがなんだかわからないと久しぶりに思う。というか、わかりたくないと思ったんだろう。
何も考えられなくて、でも何も考えなくても足だけは勝手に家に向かって動いて行った。
とっさになんとかカマをかけてみた。
「ああ、橋本さんにも聞かれたんでしたっけ。あの人ほんっと迂闊だからやめて欲しいんですけど」
「まだやめてくれないの?愛されてるよね、カズくん」
彼女さんは楽しそうに彼に絡んでいる。その呼び名も当然知っているという感じだ。
「たまにだけどイライラしてるとやってくるんだよ、わざと。俺、真顔で『課長とお付き合いされてるんですか』って聞かれたことある」
「えー、似合うかも!」
「やめろ、鳥肌立つだろ。ていうか、橋本さん引き留めちゃってすみません」
「いえ」
「あの、余計なお世話かもしれませんけど、課長いろいろ頑張ってるみたいだから、噂とか気にしなくっていいと思いますよ」
「噂?」
「いや、余計な口出しするなって言われてるんですけどでも心配かなと思って。すみません」
なんのことだかわからないけれど、それどころじゃなく、とりあえず手を振って2人を見送った。
仲良さそうに並んで歩く彼氏彼女の姿が見えなくなるまで。
なにがなんだかわからないと久しぶりに思う。というか、わかりたくないと思ったんだろう。
何も考えられなくて、でも何も考えなくても足だけは勝手に家に向かって動いて行った。