たった一つの勘違いなら。
「なに?肌質チェック?」

「ううん、なんでもない」

「詩織の意味不明感には慣れてるけどさ、今一応私の恋愛トークだからね? 聞いて?」

上目遣いで迫ってくる恵理花は、女性の目から見ても魅力的だ。



求められるままに、最近いい感じの人に本気を出すべきかどうかという話を聞いた。

「詩織に聞いてもらうとなんかスッキリするんだよね、いつもありがと」

別に何をしているわけでもないけれど、そう言ってくれるので悪い気はしない。

「婚活でもいいと思うけど、詩織の恋愛もたまには聞きたいなぁ」

「そのときは、この何年か分を取り返すように話しまくるからよろしくね」

実際には入社以来一度も浮いた話もない私は、主に手の届かない人達へのファン目線での話にしか乗っていない。

今さら恋愛はいらないかな。するなら、結婚。
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