たった一つの勘違いなら。



気づいた時には家に戻っていた。

なにがどうなってるのかまだ考えられなかったが、とにかく玄関に入って鍵を締める。

狭い廊下に沿うように、ひとり暮らし用のミニキッチンがついている。

廊下の終わりのドアを開けて奥の部屋に荷物とコートだけ放り込み、もう一度キッチンの前に立った。



彼女がいる。仲が良さそうで。

カズくんと呼ばれるのはふざけてただけで。付き合ってると言われたら、鳥肌が立つ。



鳥肌が立つ。

そんなことは言わないだろう。もし秘密の関係だとしても。

私なら絶対に言わない。


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