たった一つの勘違いなら。


「ねえ、ちょっと込み入ったこと聞くけど」

恵理花がちょっと言いにくそうに切り出す。

「遊び慣れた男が半年かけてもどうしても1度抱いてみたくなるほどいい女だと思うの、自分のこと?」

「全然」

さすがにちょっと笑った。何日振りかに。

「詩織って顔はきれいだけど凹凸少なめで色気ないし、愛想も少ないし」

はっきり断言されると魅力の乏しさが際立つけど、その通りだと頷く。

「でも優しい。言うこと言うけど話聞いてくれて、冷静に見えて人の世話は結構焼くお人好し。
一見しっかりしてそうなのに、思い込み激しくて時々意味不明。ちょっと見てて心配」

そう言われると、そうかもしれない。

「騙しやすいよね、私って」

「……付き合ったらきっと、手放せなくなるタイプじゃないのと思ってた。ああいう遊んでる男は逆に」

自分だってファンだったくせに、恵理花はもうあの人を『ああいう遊んでる男』扱い。友達甲斐のある友達だ。

< 133 / 179 >

この作品をシェア

pagetop