たった一つの勘違いなら。
「というより、むしろ詩織の勘違いに近いよね。勝手に見かけて思い込んだんでしょ?」
まあ、うん、最初はそうだけど。でもいつだって誤解を解くことはできたはずで。
「あいつとは関係ない、って言われたんだっけ。ちなみに秘書課の派手な斉藤さんは『関係あり』だよ」
なに、何どうしたの急に。でもそうだ、あの人確か斉藤さんって名前だった。
「詩織はさ、思い込んじゃうと結構他が見えなくなっちゃうところがあるから。たった1つの勘違いならどうにかできてもさ、まああっちでもこっちでも思い込まれちゃうとなかなか難しいよ、訂正するのって」
「何の話?」
「高橋にも散々『恵理花は結構脈がありそう』みたいなこと吹き込んでたでしょ、昔。ないから」
「付き合ってるくせに」
「今はね。あの頃はなかったの。いちいち言うのもめんどくさいから途中からほったらかしたけど」
そうなのか。恵理花は迷惑してたのかな。