たった一つの勘違いなら。
「許さなくていいと思うけど。嘘をついたことも、勘違いを訂正しなかったことも」
そう言うのはまた、真吾さんの話だよね。
「でも他の部分は好きならいいんじゃないの。私も詩織のおせっかいには迷惑してたけど、嫌いになったことはないよ」
「ごめん、話のつながりがよくわからない」
「好きなら逃げるなってこと」
恵理花はそこまで言って顔を背け、暗い窓の外を向いてしまった。
好きなら逃げるな。
それならわかる。でも、今さら。もうとっくの昔に逃げ出したんだから。今さらどうにもならないでしょ?
「着いたよ。ほんとよく寝るよね」
言われて眠っていたことを知る。もう料金も払ってしまったのかなと慌てて私もタクシーから降りた。
でも、ここは私のうちの前じゃない。この広々としたエントランスは。
「じゃあ、あとはよろしくお願いします。これ以上傷つけたら全力でやっつけに行くんで、覚悟しておいてください」
「ありがとう」
凄んでいる恵理花に全く動じず王子様が微笑む。
「じゃあまたね。本気出せ」
恵理花は私ににっこりと笑いかけながら口調は強く、そのままタクシーに乗って行ってしまった。
何が起きているのかまだよく飲み込めず、ぼんやりと立ち尽くす。一緒に怒ってくれていたはずの恵理花が、ここに私を置いて行ってしまった。
好きなら逃げるな。本気出せ。
そんな言葉だけを残して。
そう言うのはまた、真吾さんの話だよね。
「でも他の部分は好きならいいんじゃないの。私も詩織のおせっかいには迷惑してたけど、嫌いになったことはないよ」
「ごめん、話のつながりがよくわからない」
「好きなら逃げるなってこと」
恵理花はそこまで言って顔を背け、暗い窓の外を向いてしまった。
好きなら逃げるな。
それならわかる。でも、今さら。もうとっくの昔に逃げ出したんだから。今さらどうにもならないでしょ?
「着いたよ。ほんとよく寝るよね」
言われて眠っていたことを知る。もう料金も払ってしまったのかなと慌てて私もタクシーから降りた。
でも、ここは私のうちの前じゃない。この広々としたエントランスは。
「じゃあ、あとはよろしくお願いします。これ以上傷つけたら全力でやっつけに行くんで、覚悟しておいてください」
「ありがとう」
凄んでいる恵理花に全く動じず王子様が微笑む。
「じゃあまたね。本気出せ」
恵理花は私ににっこりと笑いかけながら口調は強く、そのままタクシーに乗って行ってしまった。
何が起きているのかまだよく飲み込めず、ぼんやりと立ち尽くす。一緒に怒ってくれていたはずの恵理花が、ここに私を置いて行ってしまった。
好きなら逃げるな。本気出せ。
そんな言葉だけを残して。