たった一つの勘違いなら。
「嘘。そんなわかりにくい話し方。なんでわざわざあいつなんて」

「彼女が詩織に会いに行ってたとか、俺が知るわけないだろ?むしろなんでそこを勘違いするのか知りたいよ」

だって、ちょうどそのタイミングで。だからあの人が真吾さんのところにも行ったのかと。

「野島さんはわかってたよ。詩織は思い込み始めるとほとんど話を聞いてないって。あの子は慣れてないんだから、好きだって直球で言ってあげないと全然わかってないとか」

真吾さんは1人で勝手に話し続けている。

「言ったら逃げられそうだったから、言わなかったんだけど。俺はずっと前から詩織が好きだよ」

そんな風に普通の顔して、そんな風に言ったからって、そんなの嘘かもしれない。

なのに嬉しくて、どうしても嬉しくなりそうで、悔しくて顔をそらした。




「詩織」

もうたぶん、勝てないんだってわかった。この声でこうやって呼ばれたら、私はもうきっと抗えない。

でも、そんなに簡単に信じられるわけじゃない。

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