たった一つの勘違いなら。
「俺が悪かった。今すぐとは言わない。でもいつか許して欲しい。それまで償わせてほしい」

償うってなに。許すまでってなに。

「一生許すつもりありませんって言ったら?」

「一生かけて償う」

「そんなの迷惑です。私、真吾さんが思ってるよりずっと……」

言いかけて、声が震えて言葉にならなかった。

真吾さんにも恵理花にも大したことじゃなかったのかもしれないけど、でも本当に傷ついたのに。

全部、全部嘘だと思った。

最初の始まりから嘘なら、確かなものなど何もないと思った。




「詩織を手に入れたかった。でも最後まで手に入らなかった」

『詩織を手に入れようとしたのは俺だ。でもやり方を間違えた』
そうか、あの時そう言ってた。もう、とっくに。

「あんなやり方で手に入れようとした俺が悪かった。でもほかの方法が思いつかなかった。どうしても君を俺のものにしたかった」

したくせに。ずるい。そんな苦しそうに。苦しいのは私だけのはずなのに。


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