たった一つの勘違いなら。
でも全部が全部嘘なわけじゃなかった。それはきっと本当で。
「今はちょっとまだ許すって言えないですけど、一生許さないなんて話じゃないってもうわかってます」
「許してもらえたときには、俺の一生を君に捧げたい」
真吾さんは真顔で『一生』と言った。
「なに言ってるんですか」
「どちらにしても俺の人生は君のものだけど」
「ダメです、そんなの。もっと自分を大事にしてください」
「自分で欲しいって言ったんだろ?」
真吾さんが欲しいですって言ったあんなの、あの時だけって言ったでしょう。人生なんて。
「そういうことじゃないです」
「欲しかったのは俺の身体だけ?」
ずるい、そんな聞き方。まるで私の方が悪いみたいに。
「自分の人生を大事にしてるよ、最大限に。詩織は俺の女神だって言っただろ。俺の人生には女神が必要だ」
口が上手い。口が上手い。この人は口が上手い人。口が上手くて、飽きっぽくて、平気で嘘をつく人。何を言ったら私が喜ぶか全部わかってる人。