たった一つの勘違いなら。
歩いて行く途中にも、怪我をしたら困るからやめたほうがいいんじゃないかとか、私が午後からやるから間に合わない分だけ真吾さんに明日お願いしたらとか、往生際悪くいろいろ言う。
「詩織のうちって、そんなに俺に見られたくないようなものがある?」
「そうじゃなくて……ほんとに、すごい状態なので」
「気が狂ったように荒れたってもう聞いてるよ」
ぽんぽんと頭を叩かれる。いやほんとに、そんないたずらした子ども対応みたいな気分じゃ無理です。
恵理花もたぶん伝えてないことをこわごわ口にする。
「警察が来ました」
「警察?すごいな」
「お巡りさんも絶句して、きっとブラックリストみたいなものに載りました」
「楽しみだな」
こんなに警告しても本気で嬉しそうに大股で歩いて行く。楽しみって、楽しみってどういうこと。
軍手もビニール袋も持ってきたし大丈夫だと言うが、ガラスの破片処理とかしたことあるんだろうか。