たった一つの勘違いなら。
そんな話が終わる頃、お母様と妹さんたちが食事の用意ができたと呼んでくださった。
女性3人はよくよくおしゃべりする人たちで、私はもう頷くだけで精いっぱいで。特に年の離れた妹さんたちは元気いっぱいだった。
「詩織さんて大人しいんだね。お兄ちゃんとなんの話するの?」
「なんだろう。仕事の相談とか料理のこととか」
聞かれて答えてみてもまた入る隙間もなくなる感じ。
「まじめー!そうか、モテる男と結婚を勝ち取るのはこういう女子か。私もがんばろう」
「ばーか、お兄ちゃんの趣味に寄せてどうすんの。自分の好きな相手リサーチしないと」
「相手がいないんだもん。まずは自分からでしょ」
「えー、そういうの不毛な努力。相手ありきだと思うよ」
「どっちだと思う? 詩織さん」
え、私?
「私は、真吾さんが私に興味を持つことなんてないと思ってたから、たまたま運がよかったというか」
「謙虚!こういうのがぐっとくるんだって」