たった一つの勘違いなら。



うちの両親は、男っ気のまるでなかった私の急な結婚話にひどく驚き、真吾さんを紹介に行くともはや喜ぶよりもうろたえているようだった。

そうだよね、半年前の私だって想像もつかない。自分が勤めている会社の王子様の結婚相手になるなんて。

確かに、これから具体的に結婚の話を進めていく中で、親同士を会わせるとかどんな感じになるんだろう。

あと社内で公表するとか、そもそも社長に了承を頂くとかいろいろあるんだろう。大変かな。でも真吾さんに任せていればその辺は大丈夫だろうから。

私にできることと言ったら何かな。




「何考えてるところ?」

葉桜さえも終わった新緑の大きな公園に、手を繋いで散歩に来たところ。

「真吾さんのこと」

「なに?」

眉をあげて目の奥が少し面白がるように光るのを、最近は逃げずに見られるようになった。

「ずっと一番のファンでいようと思って。真吾さんがどこで、何をしてても」

全部をわかることはできないし、求められてもいないみたいだけど。


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