たった一つの勘違いなら。

真吾さんは嬉しそうでもなく、首を傾げるようにしていた。

「ファンって、詩織の中でどういう定義?」

「真吾さんにはどういう定義ですか?」

うっかり丸め込まれないように質問返しをする。

「遠くから見て楽しむというか、見た目が好きとか住む世界が違うとか。ファンですって言われるたびに、そういう線を引かれてる気がしてたんだけど」

ふーん、全然違う。

「詩織?」

「勘違いですね。思い込みが激しすぎるのかも。私は最初にちゃんと言ったのに」

そんな余裕な顔をしてもダメです。真吾さんはちっともわかってない。勘違いは私だけじゃない。

「ファンっていうのは、幸せでいて欲しいってひたすら願ってるってことです。あなたの幸せが私の幸せってこと。私は線引いてるとか言ったことありません」


言い切ると、今日はしっかりやり返した気分で嬉しい。
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