たった一つの勘違いなら。
パパパパン!
突然向けられた大音量に目をつぶった。クラッカー?
「「婚約おめでとうー!」」
遅れてピンクの花びらもひらひらと舞った。フラワーシャワーみたいに。
え?あれ?高橋くんも一緒に笑ってるけど?
「サプライズ」
隣に立つ真吾さんが小さな声で言って、いたずらっぽく笑った。
「え、サプライズされたの私ですか?」
「高橋驚かせてどうするんだよ」
そうか、言われれば確かに。
そのまま手を引かれて歩いて行くと、テーブルの上にはシャンパンと生花の飾られたデコレーションケーキ。
Happy Engagement, Shiori and Shingoと書かれていた。わぁ、こんなの用意してくれてたんだ。
「えーでは、ここで、新郎新婦によるケーキ入刀です」
恵理花がふざけた声で言う。
「やる?」
「え、それは、あの、できれば本番で」
「だってさ」
えー、まあいいや、じゃあ乾杯しようか、と恵理花は笑って折れてくれて。
西山くんがポンっといい音を立てて開けてくれたシャンパンが6人皆のグラスに注がれた。
「今日はお集まりいただきありがとうございます。隠し事をするのに疲れているらしいので、今日は詩織を労わってやってください。あともう少しだけ公表しない予定なので、社内ではそのつもりでお願いします」
真吾さんが軽く挨拶し、婚約おめでとうございます、ありがとうございます、とみんなでグラスを合わせた。