たった一つの勘違いなら。
結局一人では間に合わなそうで真吾さんと一緒に準備した料理をいろいろ並べ、がやがやと楽しく食事が進んで行く。

そう言えば、高橋くんには言ってないはずだったのに。

「高橋くんはいつから知ってたの？」

「課長に誘われたって恵理花に言ったら教えてもらった。西山も前から知ってたんだろ？俺だけ蚊帳の外とかよく考えるとひどいよなぁ」

「隠し事って得意なタイプと苦手なタイプがいるでしょ？詩織も疲れているっていうし。あんまり負担かけちゃいけないかなと思って」

そう恵理花にフォローされた高橋くんはにこにこというかデレデレした顔をしている。

でもそれって恵理花が堂々と「あんたには隠し事するからね」と宣言しているということのような。2人が幸せなら、周りがとやかく言うことじゃないなと口は出さないことにしたけど。


「あれ、じゃあお2人の馴れ初めとか高橋さんは聞いてないんですか？」

「聞いたよ。たまたま西山が逃げ出したところにご飯誘われてとかだよね。でもそんなことが1回あったとしても橋本と課長って思いつかないじゃん。玉の輿狙いとかしなそうに見える」

返ってきた答えに、奈緒ちゃんはきょとんとしていた。でも西山くんをちらりと見て、余計なことは言わないことにしたらしい。

課長と西山くんを恋愛関係だと思い込んで偽装彼女になったという今考えるとバカバカしい思い込みについては聞いているのだろう。
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