たった一つの勘違いなら。
「そうかぁ、玉の輿。課長って本物の御曹司だったんですねぇ」
と話題を切り替えてくれた。
「一応ね。でも社長の息子は別にいるから本物ってほどでもないな。影森さんは俺のこと、書類出さないダメな上司としか思ってないよね」
「そんなことないですけど」
「『イケメンの皮をかぶった偉いおじさん』とか言ってたよな」
西山くんの暴露に、私と恵理花は吹き出した。
「おじさん?」
「言ってないです!ほら、うちだと偉い人ってみんなおじさんだから、イケメンが混ざってるとどう接したらいいのかと思って」
おじさんって地味に傷つくと真吾さんがわざと言うと、奈緒ちゃんはさらに慌てて言い訳をしている。
真吾さんは面白がって奈緒ちゃんをいじって喜んでいる感じ。妹さん達に接する姿にちょっと近い気がする。
奈緒ちゃんは経理担当でそんなに接点がなかったという割に、すごくリラックスして真吾さんと話している。本社でこういうノリの女性はいないと思う。