たった一つの勘違いなら。

「子会社ってもうちょっと距離が近い感じなの?」

私も思ったことを、恵理花が西山くんに聞く。

「人数少ないですからね。それに本社って、後継ぎとか王子とかいうイメージ強いじゃないですか。女性だけじゃなくて男もみんな遠巻きに見てるっていうか。だから俺連れて来てみたんだろうなって言うのはわかってて。気兼ねなく使える部下っていうか」

なんで真吾さんがこの人をとても好きなのか、わかった。西山くんはいろいろ理解した上で全面的に真吾さんの味方だ。

そういう人が真吾さんのそばにいるのは嬉しい。やっぱりちょっと妬けるけど。

「負けないように頑張りますね」

「俺にですか? 橋本さんてちょっと変わってますよね、そういうところ」

「そういうところって?」

「あれ見てなんとも思わず、俺には対抗意識を燃やすとか結構謎です」

楽しそうな奈緒ちゃんたちの様子を見やって言う。

「西山くんは妬いてるんだ」

「まぁ普通に」

普通に面白くなさそうに西山くんは言う。恵理花はそういう西山くんを笑いながら、真吾さんと奈緒ちゃんの話に割り込んだ。



私がインフルエンザだと嘘をついて引きこもっていたあの時、恵理花は西山くんから詳しく話を聞き、それから忙しそうな真吾さんの予定をキャンセルさせて直談判してくれたそうで。それ以来、二人は仲間的に仲が良い。

高橋くんは先輩として鷹揚に構えたふりをしながら、西山くんを年上ぶってかわいがる恵理花に複雑な気持ちらしい。

私も一度ランチに呼び出され、なんで西山と恵理花の仲が良いのかと聞かれた。もちろん「自分で直接聞きなさい」と突っぱねたけど。

そんなこともあり、奈緒ちゃんも交えてみんなで仲良くしてみればいいかなぁと思ったんだけど。


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