たった一つの勘違いなら。
翌日土曜のお昼頃。もしかして昨日のことは夢だったのかと思い始めた頃、スマホが夢ではなかったことを伝えて来た。
『ちょっと会えるかな。詳しいことを相談したいんだけど』
「はい、でも」
『家はどの辺? 車で迎えに行くよ』
「そんな、申し訳ないですから」
『住所言ってくれたら今ナビに入れるから』
完全に課長のペースに乗せられるままに住所を告げる。
『え? だったら歩いていけるな』
驚いたことに、課長のマンションは私の部屋から徒歩圏内にあるらしい。
『15分後に行くね。散歩できるスタイルで来てくれるかな』
それだけ告げると、返事をする間もなく通話は一方的に切れた。
……15分!
部屋着なのに!すっぴんなのに!
大慌てに慌てて出掛ける準備をして、マンションの1Fまで降りていくのにギリギリ15分。
オートロックのエントランスにはまだ課長の姿はなく、ホッと息をついて外に出てみた。