たった一つの勘違いなら。



加納さんに褒められたトップスのまま、下もスカートに履き替えて待ち合わせに向かった。学校帰りに遊びに行く学生さんみたいな所業ではあるが、私なりに最大限デートっぽくしてみたはず。

「そうか、想像以上に真面目なんだな」

でも富樫課長が一目私を見た評価はそんな感じ。

「真面目すぎますか?」

自分を見下ろして言う。富樫課長のお相手になる方々はもっと華やかなスタイルなのかな、やっぱり。

「いや、似合ってる。俺のためにわざわざ着替えてきてくれたんだ?嬉しいよ、そういうの」

いたずらっぽく言う、この人は。

王子様の『軽さ』というものを目の当たりにしているとわかっていて、それでもなお胸の奥をふわふわとした心地にさせてくれる。

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