たった一つの勘違いなら。
「詩織?聞いてる?思い出しうっとり?」
「ごめん、ちょっとそんな感じ。恵理花のほうはどう?」
「んー、あの人なんか違う気がして来た。結婚てどういう基準で選ぶんだろう」
質問系だが、恵理花の目は手元のお皿を見ている。人それぞれだよね、きっと。
「私が好きになる人って、付き合ってみると意外と気が合わないんだよねと思って」
「自覚はあるんだ。でも軽く付き合ってから本気にさせるって言ってたでしょ、それってどういう風に?」
気が合わないのに本気にはさせられるってどういう技なのだろう。
「詩織、まさか富樫課長狙っちゃおうとか思い始めてる?」
「違うよ、ちょっと気になっただけ。あれも役に立ったって言ったでしょ、元彼に会った時のための笑顔」
「ああそれね。それで最近婚活とか乗り気になれたの?」
「うん、ありがとね。春になったら本気出す」
「ほんと? 私も一応登録するからその時は誘って」