たった一つの勘違いなら。
一刀両断した後、説明してくれる。

「ゴールっていうのは説明会が終わった後の行動のこと。俺たちを思い通りに動かしたいんだろう?」

「別に操作したいのではなく協力者だとわかって欲しいんです」

「君たちが協力したがってることなんてわかってる。でも的外れなことも多い。俺たちにどう動いて欲しいかイメージしてる? そこへの動線を作るんだよ」

「動線、ですか」

「法務は内向きだからわかんないかな。別にこっち側の視点なんて気にせず、いつもの『なるほどわかったよ』っていう説明会でも問題ないと思うけどね」

煽られているのはさすがにわかった。手取り足取り教えてくれる気がないのも。

「ゴールと、動線」

そうなんだ。どう説明すればわかってもらえるか、とは全然違う考え方。それがサービスを提供していく事業部側の意識なんだろう。

「ありがとうございます。もう一度考えてみます」

今これ以上相談しても、単に甘ったれた彼女みたいになるだけだろうと思って切り上げた。

いつもとは違う形でドキドキしていた。

いつも私に見せる紳士としての優しさじゃなく、なんていうんだろう、ちょっと仕事モードの扱いをしてもらった。

やっぱり仕事してみたいかも、この人と。バカにされないだけの能力を見せられるようにしないといけないけれど。



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