たった一つの勘違いなら。
「意外と熱くなるんだよな、詩織は」
また赤くなってるかなと、頬を自分で触れてみる。
「俺らしいって、何だろうな」
ぽつりと言ってから顔を上げて私に微笑む。
「俺は詩織が思っているほどいい男じゃないんだよね。でも君に幻滅されるのだけは、ちょっときつい」
「幻滅なんてするわけありません。真吾さんは真吾さんですから、自信もっていいんです。私はいつだって真吾さんのファンです」
頬に指が伸びてきてキスされるのかと思ったら、そのまま腕に抱きしめられた。これはこれで、心臓がドクドクと音を立てていて恥ずかしくなる。
「詩織」
耳元で声がする。
「君さえいてくれたら、なんでもできそうな気がするんだ」
リップサービスだとしても、一生覚えておきたいような言葉だった。
そしてたぶん少し凹んでいるこの人は、少し本気で言ってくれていることも伝わり、私こそあなたのためならなんでもできますと心の中だけで呟いた。