たった一つの勘違いなら。
男女4人ずつの飲み会は最初こそ全員でワイワイと話していたが、私は隣の男性と2人で話す形になってしまっていた。
『橋本が来れば釣れる』と高橋くんが言っていた人なんだろう。別に何をされるわけではないけれど、いかにも私を気に入っているというこういう態度はすごく苦手だ。
「橋本さんて富樫課長と付き合ってるって噂もあったよね。美人だもんね、わかるよ」
「ないですないです!こいつは昔っから堅物で、男っ気とかほんとないですから」
高橋くんが雑にフォローに来てくれたが逆効果らしい。
「お前失礼だなぁ。ごめんね、橋本さん。そこらへんの軽い子とは違うんだよね」
困ったなと思いつつ、年齢を重ねたからか仕事での人間関係訓練の賜物なのか、無難に相槌を打ち失礼にならない程度に距離感を保つことはできるようになっている自分にホッとする。
どこが違うのかなぁと思っていた。真吾さんも女性を褒める人だが、こういう感じとは違う。
『軽い子と違う』とか誰かと比べることがないからかも。詩織はかわいいって言ってくれる時も、誰かと比べたり何かに釣り合うと言ったりそういうことはない。
私だけじゃなく誰にでも言ってるところが玉に瑕だけど。でもそこがいちばんの魅力でもある。