たった一つの勘違いなら。
自分の部屋に帰ってから、慌てて帰らない方が良かったかなと少しだけ思う。1人でいるのはちょっと嫌な夜だった。
怒っていた。呆れていた。見損なわれた。
何かを言うことも許されなかったけれど、言い訳だって思いつかない。
恵理花もいて、ごはんも食べていた。でも『恵理花とごはん』じゃない。そんなのは詭弁。
ごまかそうとしていた。バレなければ説明する必要もないと思っていた。あんな声で突き放されることを想像なんてしなかった。
飲み会に行くってもしも伝えてたらなんて言われたんだろう。
『男に隙は見せるなよ』
その程度のことは言われたかもしれない。喜んでいいのか悲しんでいいのか、わからなくなるようなことを。
行くなとも別にいいよとも言われる想像ができなかった。真吾さんにとっての私がなんなのか、最近はますますわからない。
とにかく私は勝手に嘘をついて、真吾さんはそれに怒っていた。謝り方もわからない。
狭い部屋にうずくまって、あの声を思い出していた。怒っているのにどこかからかうように響く、あの独特の声色。