たった一つの勘違いなら。


土曜から九州に向かい、台湾にも行ってくる。それって何日くらいの出張なのだろうか。あれ以来なんの音沙汰もなく、でもこちらから連絡もできずにいる。

仕事のトラブルでそれどころじゃないかもしれないし、夜だって西山さんといるのかもしれない。

でも水曜の朝、待っていてばかりもいられず高橋くんに内線で電話してみた。

『ああ、昨日の午後帰って来てる。俺連絡しとけって言われてたわ、ごめん』

「そうなんだ。トラブルじゃなさそう?」

『単なる行き違いだったみたいで、新しい話に繋げてたよ。すごいんだよなぁ意外とって言ったら失礼だけど。そっちにまた相談あったらちゃんと早めに連絡するから。
そういえばお前帰っちゃったからまた食事でもって話ちょっと出てるんだけど』

「高橋くん」

『あーダメだよな、わかってる』

「そういう回りくどいことしてても今更無理だと思うよ」

ガチャリとそのまま切った。内線って周りに丸聞こえなのに。最悪。

帰って来てるんだ。

忙しいのか、怒ってるのか、単に面倒なのか。考えたくなくて目の前の書類に集中する。

直接連絡する勇気のない私も、同じに最悪。


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