君がどんなに振り向かなくても好きだよ
智世side



花屋にバイトを始めてから大分経った



ただただ花屋をバイトしに来たわけではない



連載していたものが終わってまた新しく掲載することになったんだけど、なににしようかいまだに迷っている


だから駅の近くのここを選んだ



けれど、描きたいものが浮かばず、いまだに悩んでいる状態



人を観察してたら色々と浮かび上がるかなと思ってあそこの花屋にバイトを頼み込んだのにこれじゃあ台無しだ



まぁ、花屋は楽しいよ


おじいちゃん、おばあちゃんにも優しくしてもらって嬉しいし


時々、というか毎日お花とかお菓子とかくれるし本当に楽しい


あの人たちが本当の両親だったらいいのに



「はぁ…」



薄暗い中一人ため息をつきながら家へと向かう





チャラリラリラ♪


ふと携帯がなりポケットから携帯を取り出し画面を見れば“母”と書いてあるのを見て嫌になる


普段なら絶対に出ないけど、この際はっきり言っておこう


そう思い電話に出る



《もしもし、お母さんだけど。》


「うん」


《あんた今どこにおるん?心配してんだから早く戻っておいで!お父さんも心配してんだから》



今さら?


今さらそんなこと言う?



「なにそれふざけんなよ。今まであんたたちが私なんか心配してこなかったのは知ってる。何か都合が悪いことがあった?それぐらいしか話しかけてこなかったもんね。今さら心配してももう遅いから。あんたたちの行動はもう飽き飽き。だから二度の電話なんてかけてくるなよ」


言うだけのことは言ってお母さんの言うことは気がず荒々しく通話終了のボタンを押した


なんなんだよ今さら


なにが目的なの?



今まで散々人をコケにしてたくせに



小さい頃からいつもそうだった



なにも変わっちゃあいない



そんなところが嫌なんだよ!



いつもいつも自分のことしか考えてない


なにがお父さん?



お父さんもそう、いっつもお母さんと喧嘩ばかりしてるのに私がお母さんに殴られてひどいこと言われても“お前が悪い”鹿言わなかったじゃん!


いつもお母さんの見方しかしない



それにろくに私の顔なんて見ないくせに



今までお父さんと出かけたことないし目があったことなんていつも私を叱る時だけ



私なんて心配してないくせになにが心配してるよ!



あぁ、もう!



思い出したら腹立って来た



今日はカラオケでもいくと…



「…」



え…



ピタリとさっきまで腹がたっても歩みを止めなかった足がいつもバイト先の向かい側にいるチャラ男を見て止まった



チャラ男は私を見たまま呆然と立っている



その反応は私がさっき電話をしていたところを見ていた証




< 12 / 36 >

この作品をシェア

pagetop