君がどんなに振り向かなくても好きだよ
「あんた確かたこ焼きやの」


考えるより先に出てしまったその言葉にチャラ男なぜか「え、俺のこと覚えてくれたの!?」と言って驚いている




そしてなぜか口元を手で隠した



「そりゃあバイト先の周りはある程度知っておかないといけないしね。それより…」



少しでもわまりには聞かれないようにチャラ男の方へとズカズカ近づいて、聞こえる大きさで「聞いてた?」と確認する



なのにチャラ男はなにも答えない


無視?


イライラが増すばかりだ


けれど、チャラ男には罪はない


聞こえてなかっただけだとおもうからここは我慢だ我慢



今度は少し大きめで話しかけてみる



「ねえ、聞いてんの?」


「あぁ、ごめん。やっぱり聞いてちゃマズかった?」


そう言うチャラ男の声はうれしそうだ


わかっている



悪気があってやっているわけじゃないと


チャラ男がバカにしていないって言うのは重々承知している



けれど、その口元を手で押さえながら笑い含んだ姿は思い出さなくてもいいもの、昔の恋人の妬みにそっくりだった


「チッ」


思い出したくもないもん思い出しやがって



ついに私のイライラは頂点にまし、なんの罪もないチャラ男に八つ当たりをしてしまった


「今のは全て忘れろ」


できないことはわかっている



無茶なことを言っているのはわかっている



でも、八つ当たりせずにはいられなかった



私はイライラを抑える方法すら知らない


八つ当たりをすることしか知らない



自分がどんなにゲスなのかはもう知っている



「なに言ってんの?」


チャラ男は口元を隠すのをやめた


同時にさっきまでのうれしそだった声ももういない



そんなの御構い無しで言う



「忘れろって言ってんだよ。ばか!もし私の知り合いにでもばれたら今まで偽って来たことが台無しになんじゃん!」



そういうと、チャラ男は一瞬悲しい顔をする



が、すぐに鋭い目つきへと変わった



怒ってるんだ



そんな時、チャラリラリラ♪
と電話が鳴る



あぁ、もう!


誰からよ!



ポケットに入れていた携帯を取り出しスマホのロック画面を見てみれば



「っ!?」


川瀬さんだ!



あわてて笑顔を作り携帯に出る
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