君がどんなに振り向かなくても好きだよ
「もしもし、川瀬さんですか?」


いつもと同じなるべく明るく



イラついてるのを悟られないように話をする



《あぁ、智世ちゃん?原稿今どのぐらいまで進んでるかな》


そう優しい音色で穏やかに聞いてくる川瀬さんはやっぱり癒される



こんだけでも癒されるんだもん


やっぱり川瀬さんはすごいなぁ



《あれ?智世ちゃん?》



あ、原稿!?



「あ、すみませんまだ作っている最中で…本当にごめんなさい。」



と無意識にペコペコと頭を下げる私



《あははは、大丈夫だよ。それよりも体、気をつけてね。もしなんかあったら言ってね。僕が相談に乗るから、何か欲しいものがあったら言ってね、僕が喜んで買ってくるから。》



「はい、ありがとうございます」



本当に優しいなぁ川瀬さんは



こんなに優しい人そんなにいないよ〜



と心の中で感動していると



《あ、そうそう先月の原稿のランキング、智世ちゃんが一位だったよおめでとう。》



「あ、ありがとうございます!」



《頑張ってね…それと今度の新しく連載するやつ?あるでしょ》



「はい」



なんだろう


《今度はライバルとか入れてみてもいいんじゃないかな》



「…ライバルですか?」


《うん、もちろん智世ちゃんの漫画はライバルなくても面白いけどやっぱり刺激があったほうがもっと伸びるとおもうんだよ》


「は、はぁ…」


《あ、でも、別に無理だったらいいよ。それじゃあ、お仕事頑張ってね。応援してるから》

「はい」



《あと、体も気をつけるんだよ。それと一応言っておくけど、締め切り1週間後だよ?》



っ!?


い、1週間後!?


すっかり忘れてた


もうそんなに時間たってたんだ



やばい、全然やってないんだけど!!



《智世ちゃん?》


はっ!


いけないいけない



川瀬さんを困らせるところだった



「はい、分かってます。川瀬さんもお仕事頑張ってくださいね。」



なるべく動揺を悟られないようにいつものように自分を偽る


《あはは、ありがとう。それじゃあね》



ツーーツーー…


ど、どうしよう!!!



あぁーーーー!!!!!


だっていまだに描きたい物語が見つからないんだよ!



どうしたら…



「あの、大丈夫?顔真っ青だけど」


「え…」


心配そうに伺うその顔はもうさっきのように怒ってないみたい



「ごめんね」



今スラっとその言葉が出て来たのは、もう私が怒っいないから



「─︎─︎─︎─︎─︎─︎─︎…………え?」



けれど、この人はさっきまで自分が怒っていたことを忘れている


だからもう少し付け加えることにした



「さっき、私無茶苦茶なこと言ってあなたを怒らせたから…」


そう完璧に理解できるように謝ったのに、チャラ男の顔は今まで見たことのない間抜けヅラだった


仮にもチャラ男のイケメンの顔が台無しだ



「え、俺に言ってんの?」



「え…うん」



私とあなた以外に誰がいるっていうの?



誰もいないけど?


でも一応周りを確かめる


誰もいないよね


キョロキョロ


うん、やっぱりいない
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