南くんの花嫁( 猛 烈 修 行 !! )
私に見えるのは瀬那の胸の辺りだけ。
きっと、道行く人たちみんなが私たちを見ていくだろうな……なんて、働かない頭でぼんやり恥ずかしさを覚えながらも、今は瀬那の声だけが私の中に溶けていく。
「離れて、改めて佑麻がいない人生なんて……絶対ありえねぇって思った。俺の人生において、こんなに俺の中にウザってぇくらい居座って、良くも悪くも引っ掻き回すのは、ほんとお前ぐらいだよ」
ギュッと抱きしめる腕に力がこもって、私の涙腺を緩めていく。
「……消えないでって、ずっと思ってたの。離れても瀬那の中にある私が少しも薄れないでって」
瀬那と過ごしてきたこの数年間は、私の人生で1番濃くて、甘くて、優しくて、幸せで、大切で。
だけど、私が生きてきた中のほんの数年でしかなくて。それは瀬那にとっても同じことだから。
どんな記憶にも負けないで欲しいって思ってたよ。
そばにいられない日にも、記憶の中の私が瀬那を1人にはしないように、強く強く瀬那の中に残ればいいのに。
それくらい、強く深く……瀬那が大好きだから。