南くんの花嫁( 猛 烈 修 行 !! )
「……はぁ」
「溜息つきたいのはこっちだもん」
「ちゃんと美味かったって俺言わなかった?」
「い、言われてない!美味しかった?って聞いたら"ん"ってだけ言って無言で食べてたもん」
幼稚だって言われりゃそうだけど、だけど……私だって瀬那に美味しいって言ってもらいたくて頑張ってるんだから、
そこはもっと汲んでくれてもいいんじゃない?
私に抱きつかれたって嫌な顔しないでくれる瀬那は、"南くん"と呼んでいたあの頃よりずっと、優しくなった。
「……美味かった」
「っ!そう、それ!その言葉が聞きたかったの!」
それは時の流れなのか、それとも私たちの絆が深まったからなのか、愛が大きくなったからなのか。
それは分からないけれど、
「サラダに入ってたキュウリ。……輪切りに見せかけて全部繋がってたけどな」
「……え!!?嘘っ……」
「笑いこらえんの大変だった」
クスクスと肩を振ふわせる瀬那に、もういっそ笑ってくれよ!!!なんて思いながら、今日のご飯は完璧と思ってただけにもしかして他の家族のサラダでもキュウリが繋がってたかもしれないと思うと
なんだか今、猛烈に恥ずかしくて埋まりたい。
『よーく切れる包丁だから気をつけてね』
瀬那のお母さんの言葉を思い出しては、それだけ切れる包丁でキュウリを繋げて切れた自分を尊敬すらしそうだ。
……私のサラダでは、キュウリちゃんと切れてた気がしたんだけどなぁ。