南くんの花嫁( 猛 烈 修 行 !! )



……言えない。
こんな不機嫌な瀬那には、言えっこない。


「瀬那、疲れてる?」


「疲れてる」


「……ご飯、今用意するね」


「いい。今日はシャワー浴びたら寝る」



……この感じ、瀬那はただ疲れてるだけじゃない。きっと瀬那は怒ってるんだ。

バカな私でも分かるくらいに、珍しく感情を全面に出している瀬那を見て何だか分からないけどすごく泣きたくなった。


でも、何でだろう。
瀬那は何に対して怒ってるんだろう?


……もしかして、


「瀧との電話に怒ってる?」


リビングへと向かっていく瀬那の背中に、小さな声で問いかければ、瀬那の肩が小さく揺れた気がした。



「……別に」


「じゃあ、何に対して怒ってるの?」


「だから……。あのな、普通に考えて"礼状の書き方が分からない"なんて、ただの口実だろ」




一瞬、言うのを躊躇ったように見えた瀬那は、一呼吸置いてから思い直したかのように口を開いた。



「……口実?」


「相手は佑麻のことが好きだって言ってる男だぞ?そんな男がこんな遅くに電話して来るなんて下心以外に何があんの?……それに対して何の警戒心もないお前もお前だ」



「瀧は友達だもん。警戒するなんて変だよ」



だってある意味それって、常に瀧を意識して生活するってことでしょ?


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