南くんの花嫁( 猛 烈 修 行 !! )
瀬那の言う「警戒心」がヤキモチから来る言葉なら凄く嬉しいって思うのに。
瀬那を安心させるために、瀧と距離を置くのは違う気がするんだ。
だって、それって
瀧の近くに行っちゃダメ……
瀧と2人になっちゃダメ……
瀧からの電話に出ちゃダメ……
瀧の前で気を抜いちゃダメ……
瀧に対して警戒心を持って過ごす=瀧と仲良くするなってことでしょ?せっかく仲良くなれた大事な友達なのに、私にはそんなこと出来ないよ。
「そんなに大事な"友達"かよ」
「そうだよ……大事な友達だもん」
「……疲れて帰ってきて、まさか他の男のことを大事だって聞かされるとは思ってなかった」
「ち、違っ!そういう意味じゃ」
「もういい。疲れた。シャワー浴びて来る」
……瀬那と瀧。
どっちも大切なことには違いないのに。
どうしてこう、上手くいかないんだろう。
好きで、好きで好きで仕方なくて、ずっと傍にいたいと思う恋人の瀬那と、バカみたいに騒いで、一緒にいて楽しい友達の瀧。
……私がおかしいのかな?
もし好きな人が嫌がったら、普通の女の子は簡単に友達と距離を置けるんだろうか。
……そんな簡単に距離を置けちゃうような"友達"なんだろうか。
1人残された玄関でグチャグチャな気持ちを抱えたまま、今にも溢れてしまいそうな涙を必死に堪える。
こんなに苦しい気持ちになるくらいなら、いっそ、感情なんてなくなればいいのに。