素直になれない
「ご用件は?」


つっけんどんな物言いは、更に先生の機嫌を損ねたようだ。だけど知ったこっちゃない。


「……105の羽田さんに検査依頼出しといたけど」


「え、?何時ですか?」


担当の患者さんの指示は、休憩に入る前にチェック済だ。


「きちんと伝えるように言っておいたぞ。あの新人に……ええと、なんてったっけ……横澤だったかな?」


横澤さん、と聞いて溜息がでそうになるのを咄嗟に堪えた。


毎年数人入ってくる新卒の中には、一人か二人は注意が必要な子がいる。


今時……という言葉では片付けられない、この医療の現場でも例外ではない。


横澤さんも根は悪い子ではないのだけど、やはり今時の子なのだ。


きっと指示を聞いたものの、私がいなかったことでそのまま自分の中に留めてしまっているのかもしれない。


他のスタッフに言えば済む話なのに、と何度思ったことか。


だけど少しずつ成長してきていると思うところもあったのにな。


「すみません。確認ができていませんでした。至急確認して検査部に請求を出しておきます」


他の医師なら、こう下手に出ればそれで済む話だったんだ。


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