素直になれない

だけど、彼が住むアパートに辿り着いて彼のアパートの部屋の扉を見上げた時、偶然開いた扉から出てきたのは彼だけじゃなかった。


仲睦まじい様子で彼と腕を組んで、彼の部屋から出てきたのはとても綺麗でスタイルのいい女のヒト。


声をかけることもできずに逃げ帰り、彼に関する全てのデータを消した。


電話番号も、住所を書いた紙も、何もかも全部。

就職してからは、家を出て一人暮らしを始めた。


家にいれば弟の顔を見るだけで彼のことを思い出してしまうから。


その甲斐あって、新しい環境に馴染むことに必死だった私はようやく彼の事を思い出の片隅に押し込めることができた。


弟を見ても彼の事を思い出さなくなった。


そして、今に至るのだけど。


なんで、会っちゃうかな。


しかも、恵都とはずっと繋がっていたなんて嘘だよね、マジわけわかんない。


< 33 / 61 >

この作品をシェア

pagetop