素直になれない
「……会いたくなんかなかったわよ!」


思いの外大きな声が出た。


「っ、いきなりなんだ⁉︎」


そして、そんな自分の声に反応した誰かの声。


すごく近くで聞こえて、ハッとした。


いつの間にか寝ていたんだと気付いて、そしてギョッとした。


私、誰かにおぶわれてる。


温かくて、広い誰かの……背中。


「気づいたのか……お前」


呆れたような声音がすぐ近くで聞こえて、肩越しに振り返った見覚えのある顔。


なんで?


よりによって日向先生におぶわれてんの、私。


「っ、おろして!」


叫ぶと同時に両腕を突っ張らせて彼の背中から離れた。


「うわっ、暴れんなっ!」


怒られても、ハイ分かりましたなんて大人しくなれるか。


ジタバタと暴れる私を最後まで支えきれず、バランスを崩した日向先生の身体諸共視界がぐらりと大きく揺れた。


わ、気持ち悪っ。


脳が揺さぶられる感覚に吐き気を催して口をギュッと噤んで手で覆う。


そうしながらも、地面へ真っ逆さまに落ちていく自分を意識して、当然襲ってくる痛みを覚悟した。


でも……。


痛くない。


寧ろ、柔らかい何かに囲われてる。


「……?」


ボンヤリと霞む視界の向こうに見えたのは、日向先生の顔面のアップだ。



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