素直になれない
「りん!言えって。どこが痛いのか言わなきゃわかんないだろうが」
心配でたまらないって顔しながら、日向先生は私の身体をそっとさする。
騙されちゃダメだ。
この人は優しい顔をして近づいてきて、結局はまた私を裏切る。
熱くなった目頭を手の甲で拭って頭を振った。
「大丈夫です。どこもぶつけてません」
「でもお前、痛いって……」
「大丈夫だって言いましたよね。いい加減離れてください」
自分でも驚くくらい冷たい声が出た。
助けてもらってこんな態度されたら、誰だってムカつくだろう。
それが分かっていたけど、止まらなかったし訂正もできなかった。
それでも彼の顔をまっすぐ見ることができず、視線を逸らしたまま立ち上がり服の汚れを払った。
「大丈夫ならいい」
彼の声もまた冷ややかに響いた。