素直になれない
彼の特別なコ
診察室に戻ると次の患者さんのカルテが回ってきていた。


「すみません、お待たせして。次の患者さん入ってもらいますか?」


電子カルテを見ていた日向先生に声をかけた。


けれどそれに返事がなくて、もう一度声をかけるとハッとした様子で日向先生は顔を上げて私を見た。


「……あ、あぁ。入ってもらって」


なんだかボンヤリした様子が気になったけれど診察が始まればまたいつもの日向先生に戻っていたからさして気にも留めなかった。


そのあとも1人2人と診察を回して、午前診療が終わる時間最後に1人の患者さんが飛び込みで入ってきた。


事務からの申し送りだと、元々患者さんの付き添いで来ていた女性が眩暈を起こして倒れたということだった。


処置室に寝かされていたのは、若い女性で顔色も凄く悪かった。


「大丈夫ですか?」


声掛けに瞼が震えるように動いた。


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