素直になれない

思わず顔を上げて、その声の、手の、持ち主を視界に入れて……私は自分がどんな表情でいるのか咄嗟には分からなかった。


だけど相手の顔はよく見えていた。


驚いた表情の後、スッと冷えたその瞳孔の色。


冷たくて震え上がりそうなほど怖い。


軽蔑に近いその表情で、私が関わりを持ちたくないと思った相手が私を見下ろしていた。
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