Secret answer ~キミノトリコ~

それから午前の業務を終え、ランチをするために馴染みの定食屋さんに向かって歩いていた時のこと。

「ねぇ、あの男の人誰!?」
「え、どこ?」

不意に近くから聞こえてきた声に、反射的に彼女たちの指差す方を目で追った。

…なんだろう?

反射的に、何気なく…そんな理由で視線を向けた街頭の大型ビジョン。
そこに映し出された姿を見て…一瞬、時が止まった。

「え…」

≪phase、待望のニューアルバムを引っさげていよいよ全国ツアー開始!≫

大型ビジョンから大音量で流れてくるなにかの音楽と、そんな声。

「phaseだよ!知らないの!?」
「えー知らなかった…てか全員、顔面偏差値高くない!?」

大型ビジョンに釘付けになり、興奮気味に飛びはねる女子高生。

え、どういうこと…?

そして呆然と立ち尽くす、私。

「…そーちゃん?」
「え?」

ほとんど無意識に口から出たその言葉に反応したのは、隣にいる実彩子先輩だった。

うわ、私…声に出てた!?

思わず口元を手で覆ったけれど、実彩子先輩の視線はまっすぐにこちらへと向けられている。

「茉優ちゃん、もしかして…」

見間違いでなければ、そーちゃんはおそらく芸能人なのだということになる。
私みたいな一般人が知り合いだとかって、バレて大丈夫なの!?
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