Secret answer ~キミノトリコ~
「んー!最っ高の場所ね」
「こ、こんなに近いんですか…」

視界を遮るものは無く、限りなくクリア。目の前の少し高いところにステージ。
最前列の少し右端寄り…そんなおそらくすごい場所に、私たちは陣取っていた。

「響くんも奏くんも同じ右ポジでよかったわ」
「右ポジ?」

首を傾げた私を見て実彩子先輩がしてくれた説明によると、5人組のphaseはボーカルが2人でパフォーマーが3人。
真ん中には一番小柄で、だけど抜群にダンスが上手い音くん、それを挟むようにボーカルの2人…左に楽くん、右に響くん。そしてさらにそれを挟むように左サイドに律さん、右サイドにそーちゃんがポジション取りをするパターンが多いのだという。

「まぁもちろん曲や演出によって違うんだけど…基本的にはそういう風になってることが多いかな」
「なるほど…」

ファンの人ってそんなところまで研究し尽くしてるんだなぁ…

単純にすごいと思いながら、先輩の話を聞いていた。
同時にそれだけの熱量を注がれる彼らの存在が魅力的なのだと思うと…なんだか急に、そーちゃんが途方もなく遠い存在に感じられるような気がして。

…って、そもそも近くもなんともないか。

結局あれからそーちゃんに連絡はしていなかった。
彼が芸能界で活躍する存在だと知って、なんて連絡すればいいのかわからなかったから。

今日ライブに行くことを決めていたから、その感想でも送ってみようかななんて思ったりもしていたけれど…そんな勇気も無くなりかけていた。
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